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読書メモと勉強したことのまとめ。

2025年に読んだ本

 

去年の記事

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2025年の読書メーター
読んだ本の数:46冊
読んだページ数:12442 (34.1/day)

 

2025/1から2025/12までの月ごとの読書量が棒グラフで示されている。2025年5月にゼロ冊になっている。6月の読書ページ数が最も高く、1月の読書冊数が最も多い。

月ごとの読書量の変化

全体を通して。

これまでの読書量は以下の通り。

  • 2020年
    • 読んだ本の数:90
    • 読んだページ数:27,810ページ (76/day)
  • 2021年
    • 読んだ本の数:136
    • 読んだページ数:43,140ページ(118/day)
  • 2022年
    • 読んだ本の数:102冊
    • 読んだページ数:29,013ページ(79.5/day)
  • 2023年
    • 読んだ本の数:44冊
    • 読んだページ数:13,249ページ(36/day)
  • 2024年
    • 読んだ本の数:52冊
    • 読んだページ数:17,046ページ (46.7/day)
  • 2025年(今年)
    • 読んだ本の数:46冊
      読んだページ数:12,442ページ (34.1/day)

冊数では2023年より1冊多いが、ページ数では最低記録だった。洋書の冊数が増えており、ページ数減少の理由はそれだろうが、しかし、本当はもっと多くの本を読みたい。今年は自分の研究時間の確保と共に、読書に費やす時間を確保できなかった。5月に至っては1冊も本が読めていない。今年の目標は、今度こそ余裕を持つことなので、余裕を持って読書したい。

 

読んでよかった本(特によかったのは太字)

  1. 意識と目的の科学哲学 (慶應義塾大学三田哲学会叢書)
  2. Animal Cognition: Evolution, Behavior and Cognition
  3. Animals, Equality and Democracy (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series)
  4. A Theory of Justice for Animals: Animal Rights In A Nonideal World
  5. Consent Matters
  6. ニュートン新書 基礎からわかるクリティカル・シンキング
  7. 暴力と紛争の“集団心理”: いがみ合う世界への社会心理学からのアプローチ
  8. 暴力のエスノグラフィー――産業化された屠殺と視界の政治
  9. 習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか
  10. 道徳は進歩する──進化倫理学でひろがる道徳の輪
  11. 社会的なものを組み直す: アクターネットワーク理論入門(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1090)
  12. 善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史
  13. Undoing Suicidism: A Trans, Queer, Crip Approach to Rethinking (Assisted) Suicide
  14. A Better Ape: The Evolution of the Moral Mind and How It Made Us Human
  15. The Moral Circle: Who Matters, What Matters, and Why (Norton Shorts)
  16. Overcoming Objectification (Routledge Research in Gender and Society)
  17. The Epistemology of Resistance: Gender and Racial Oppression, Epistemic Injustice, and Resistant Imaginations (Studies in Feminist Philosophy)
  18. アゲインスト・デモクラシー 上巻・下巻
  19. 人形メディア学講義
  20. Sentientist Politics: A Theory of Global Inter-Species Justice
  21. Expertise, Policy-making and Democracy (Routledge Studies in Governance and Public Policy)
  22. 日本の政策はなぜ機能しないのか? EBPMの導入と課題 (光文社新書 1320)

22/45(≒0.49)で、去年(0.56)より悪い。これは、授業のため、科研費を取るために読んだ本があったせいな気がする(良い本の判定基準は、議論されてる内容の良さだから)。そのため実際の割合としてはあまり変化がないかもしれない。

太字の本についてコメント。

  • 個人的ベスト3は、『Undoing Suicidism』、『アゲインスト・デモクラシー』、『Sentientist Politics』。いずれも方向性は違うが、私が書きたい本はまさにこういう本なのだ、と思わせるものだった。(ベスト5なら、これに『Overcoming Objectification』と『Expertise, Policy-making and Democracy』を加える。)
    • 『Undoing Suicidism』は二つの点で素晴らしかった。第一に、本書は、自殺志願的な人々に対する抑圧を自殺排除主義(suicidism)として指摘する、という新しいことをやっているのだが、そのポテンシャルが極めて大きく、非常に魅力的な議論に思われること。様々な規範がある中で、私は、種差別的規範と、生存的(自殺を許さない)規範がとても強いと常々感じていた。種差別規範は動物倫理学ですでに十分に議論があったが、後者についてこれまで的を射た批判をあまり見ることができなかった。本書はそこを提供している。第二に、本書は学術界における健常者主義(academic ablism)という懸念を真摯に受け止め、オープンアクセスかつやさしい英語で執筆するということを心がけており、この手の議論としては大変読みやすかった。
    • 『アゲインスト・デモクラシー』は、経験的分析政治哲学という感じのもので、経験的データを使いながら、分析哲学のクリアな方法論と記述で、民主主義を擁護する様々な理路を打ち砕いている。民主主義擁護論はかなり難しい立場に立たされていると確信した(その後、本書より後に出た『Democracy without Shortcut』という本を途中まで読んだが、批判に十分に答えられてるとは思えなかった。)。
    • 『Sentientist Politics』は、動物政治哲学とも言えるような本であり、いかにして非ヒト動物を包摂しながら政治社会を構築していくか、ということを力強訴えている本だった。ドナルドソン&キムリッカ『人と動物の政治共同体』も、共生社会の構想を提示する素晴らしい本だったが、本書はさらにその先をいっているように思われる。著者のA. Cochrane自身の強い思いも感じることができ、読んでいて大変感動した。
  • 『A Theory of Justice for Animals: Animal Rights In A Nonideal World』:非理想理論的な動物政治哲学の議論。このトピックでの初期の文献の一つで、様々な理論の整理と批判がうまかった。
  • 『Consent Matters』:同意について体系的に議論する本。思考実験をあまり使わず、また非日常的な事例での直観を根拠に使わず、実際の事例や法体系を参照しながら議論するという方法論に魅力を感じた。同意について体系的に考える上でも参考になった。
  • ニュートン新書 基礎からわかるクリティカル・シンキング』:授業設計のために読んだ。クリティカル・シンキングを教える側にとって有用な話が多くあり、良かった。
  • 『A Better Ape: The Evolution of the Moral Mind and How It Made Us Human』:進化生物学やほかの様々な経験的知見を使いながら、ヒトという存在がいかに道徳的になってきたのか、規範とどのように付き合っていけばいいのかなどが議論されており、勉強になった。
  • 『Overcoming Objectification』:性的モノ化の限界を指摘する議論だった。本書では派生物化という別の概念を提示していたが、これはあまりうまくいってないように思える。どちらかといえば、性的モノ化の限界を指摘する箇所(ch. 2)、および著者自身が提示する肉体の倫理とでも言えるもの(Conclusion)が面白い。
  • 『人形メディア学講義』:最近人形に興味を持ち始め読んだが、思ったよりも面白く、さらに人形に興味を持てた。
  • 『Expertise, Policy-making and Democracy』:民主主義における専門家の位置づけを整理する本。短いのでサクッと読めるが、内容は重厚。『アゲインスト・デモクラシー』を読んでから読むと、「専門家」についてより深く考えたくなるだろう。

 

読んだ本


動物心理学入門: 動物行動研究から探るヒトのこころの世界 (単行本)動物心理学入門: 動物行動研究から探るヒトのこころの世界 (単行本)
読了日:01月03日 著者: 
意識と目的の科学哲学 (慶應義塾大学三田哲学会叢書)意識と目的の科学哲学 (慶應義塾大学三田哲学会叢書)
読了日:01月06日 著者:田中泉吏,鈴木大地,太田紘史
アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全 (岩波ブックレット)アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全 (岩波ブックレット)
読了日:01月08日 著者:枝廣 淳子
Animal Cognition: Evolution, Behavior and CognitionAnimal Cognition: Evolution, Behavior and Cognition
読了日:01月10日 著者:Clive D. L. Wynne
Animals, Equality and Democracy (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series)Animals, Equality and Democracy (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series)
読了日:01月13日 著者:S. O'Sullivan
アニマルウェルフェアを学ぶ: 動物行動学の視座からアニマルウェルフェアを学ぶ: 動物行動学の視座から
読了日:01月15日 著者:佐藤 衆介
A Theory of Justice for Animals: Animal Rights In A Nonideal WorldA Theory of Justice for Animals: Animal Rights In A Nonideal World
読了日:01月15日 著者:Robert Garner
Consent MattersConsent Matters
読了日:02月03日 著者:Robert E. Goodin
台湾のデモクラシー-メディア、選挙、アメリカ (中公新書 2803)台湾のデモクラシー-メディア、選挙、アメリカ (中公新書 2803)
読了日:02月20日 著者:渡辺 将人
台湾の歴史と文化-六つの時代が織りなす「美麗島」 (中公新書 (2581))台湾の歴史と文化-六つの時代が織りなす「美麗島」 (中公新書 (2581))
読了日:02月22日 著者:大東 和重
差別の哲学入門 (シリーズ・思考の道先案内1)差別の哲学入門 (シリーズ・思考の道先案内1)
読了日:03月02日 著者:池田喬,堀田義太郎
動物のもつ倫理的な重み: 最小主義から考える動物倫理動物のもつ倫理的な重み: 最小主義から考える動物倫理
読了日:03月10日 著者:久保田 さゆり
ニュートン新書 基礎からわかるクリティカル・シンキングニュートン新書 基礎からわかるクリティカル・シンキング
読了日:03月12日 著者:ジョナサン ヘイバー
動物という隣人: 共感と宗教から考える動物倫理動物という隣人: 共感と宗教から考える動物倫理
読了日:04月20日 著者:鬼頭 葉子
暴力と紛争の“集団心理”: いがみ合う世界への社会心理学からのアプローチ暴力と紛争の“集団心理”: いがみ合う世界への社会心理学からのアプローチ
読了日:04月23日 著者:縄田 健悟
暴力のエスノグラフィー――産業化された屠殺と視界の政治暴力のエスノグラフィー――産業化された屠殺と視界の政治
読了日:04月30日 著者:ティモシー・パチラット
習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか
読了日:06月09日 著者: 
道徳は進歩する──進化倫理学でひろがる道徳の輪道徳は進歩する──進化倫理学でひろがる道徳の輪
読了日:06月20日 著者:ピーター・シンガー
社会的なものを組み直す: アクターネットワーク理論入門(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1090)社会的なものを組み直す: アクターネットワーク理論入門(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1090)
読了日:06月30日 著者:ブリュノ ラトゥール
親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか
読了日:06月30日 著者:マイケル・E・マカロー
ヒトは〈家畜化〉して進化した―私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのかヒトは〈家畜化〉して進化した―私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか
読了日:07月09日 著者:ブライアン・ヘア,ヴァネッサ・ウッズ
20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業
読了日:07月25日 著者:長谷川愛
善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史
読了日:08月01日 著者:リチャード・ランガム
Undoing Suicidism: A Trans, Queer, Crip Approach to Rethinking (Assisted) SuicideUndoing Suicidism: A Trans, Queer, Crip Approach to Rethinking (Assisted) Suicide
読了日:08月03日 著者:Alexandre Baril
A Better Ape: The Evolution of the Moral Mind and How It Made Us HumanA Better Ape: The Evolution of the Moral Mind and How It Made Us Human
読了日:08月13日 著者:Victor Kumar,Richmond Campbell
The Moral Circle: Who Matters, What Matters, and Why (Norton Shorts)The Moral Circle: Who Matters, What Matters, and Why (Norton Shorts)
読了日:08月16日 著者:Jeff Sebo
できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ (KS科学一般書)できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ (KS科学一般書)
読了日:08月17日 著者:科研費.com
狙って獲りにいく! 科研費 採択される申請書のまとめ方狙って獲りにいく! 科研費 採択される申請書のまとめ方
読了日:08月18日 著者:中嶋 亮太
Overcoming Objectification (Routledge Research in Gender and Society)Overcoming Objectification (Routledge Research in Gender and Society)
読了日:09月04日 著者:Ann J. Cahill
人種契約(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1150)人種契約(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1150)
読了日:09月05日 著者:チャールズ・W・ミルズ
The Epistemology of Resistance: Gender and Racial Oppression, Epistemic Injustice, and Resistant Imaginations (Studies in Feminist Philosophy)The Epistemology of Resistance: Gender and Racial Oppression, Epistemic Injustice, and Resistant Imaginations (Studies in Feminist Philosophy)
読了日:09月26日 著者:Jose Medina
「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 (扶桑社新書)「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 (扶桑社新書)
読了日:09月27日 著者:佐々木チワワ
AIの政治哲学AIの政治哲学
読了日:10月01日 著者:M. クーケルバーク
アゲインスト・デモクラシー 上巻アゲインスト・デモクラシー 上巻
読了日:10月08日 著者:ジェイソン・ブレナン
人形メディア学講義人形メディア学講義
読了日:10月16日 著者:菊地浩平
Sentientist Politics: A Theory of Global Inter-Species JusticeSentientist Politics: A Theory of Global Inter-Species Justice
読了日:10月18日 著者:Senior Lecturer in Political Theory Alasdair Cochrane
人形と情念 (現代美学双書 4)人形と情念 (現代美学双書 4)
読了日:10月24日 著者:増淵 宗一
真理・政治・道徳―プラグマティズムと熟議―真理・政治・道徳―プラグマティズムと熟議―
読了日:10月29日 著者:C・ミサック
Expertise, Policy-making and Democracy (Routledge Studies in Governance and Public Policy)Expertise, Policy-making and Democracy (Routledge Studies in Governance and Public Policy)
読了日:11月07日 著者:Johan Christensen,Cathrine Holst,Anders Molander
民主主義を数理で擁護する: 認識的デモクラシー論のモデル分析の方法民主主義を数理で擁護する: 認識的デモクラシー論のモデル分析の方法
読了日:11月07日 著者:坂井 亮太
アゲインスト・デモクラシー 下巻アゲインスト・デモクラシー 下巻
読了日:11月07日 著者:ジェイソン・ブレナン
日本の政策はなぜ機能しないのか? EBPMの導入と課題 (光文社新書 1320)日本の政策はなぜ機能しないのか? EBPMの導入と課題 (光文社新書 1320)
読了日:11月14日 著者:杉谷和哉
世界に学ぶミニ・パブリックス: くじ引きと熟議による民主主義のつくりかた世界に学ぶミニ・パブリックス: くじ引きと熟議による民主主義のつくりかた
読了日:12月06日 著者:OECD(経済協力開発機構)
Autonomy, Enactivism, and Mental Disorder: A Philosophical Account (Routledge Studies in Contemporary Philosophy)Autonomy, Enactivism, and Mental Disorder: A Philosophical Account (Routledge Studies in Contemporary Philosophy)
読了日:12月08日 著者:Michelle Maiese
アクティブラーニング (シリーズ 大学の教授法)アクティブラーニング (シリーズ 大学の教授法)
読了日:12月23日 著者:中井 俊樹
Objectification: On the Difference between Sex and Sexism (Gender Insights)Objectification: On the Difference between Sex and Sexism (Gender Insights)
読了日:12月30日 著者:Susanna Paasonen,Feona Attwood,Alan McKee,John Mercer,Clarissa Smith

 

2024年に読んだ本

 

 

去年の記事

mtboru.hatenablog.com

 

2024年の読書メーター

読んだ本の数:52冊

読んだページ数:17046ページ (46.7/day)

 

月ごとの読書量の変化

 

全体を通して

これまでの読書量は以下の通り。

  • 2020年
    • 読んだ本の数:90
    • 読んだページ数:27,810ページ (76/day)
  • 2021年
    • 読んだ本の数:136
    • 読んだページ数:43,140ページ(118/day)
  • 2022年
    • 読んだ本の数:102冊
    • 読んだページ数:29,013ページ(79.5/day)
  • 2023年
    • 読んだ本の数:44冊
    • 読んだページ数:13,249ページ(36/day)
  • 2024年
    •  読んだ本の数:52冊
    • 読んだページ数:17,046ページ (46.7/day)

2024年の読書量は2023年と比べると増えているが、個人的にはもう少し増やしたいと思った一年だった。

もう少し増やしたいと思うのは、自分の研究が場当たり的になっているように感じてきたからだ。論文ばかり読んでいるとより大きな視点を持つのが難しくなる。専門的すぎて(論文なので当然だが)私の視野が狭くなる。そうした狭さを広げてくれて、俯瞰的に眺めることや視点を大きく変えることを可能にするのが本だと思う。これは『客観性』が特にそうだったと感じる。

学際的に研究したいと思っており、そうした視野の広さ、視点を(適宜)変えることを大事にしたいので、2025年はもう少し読書時間を増やしたい。

 

読んでよかった本(特によかったのは太字)

  1. 記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 
  2. 私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か 
  3. 〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か  
  4. クジラと話す方法 
  5. 分析フェミニズム基本論文集 
  6. 客観性 
  7. ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと 
  8. 信頼と裏切りの哲学 
  9. 心理学を遊撃する: 再現性問題は恥だが役に立つ 
  10. あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか 
  11. ケアの倫理──フェミニズムの政治思想 
  12. Wild Animal Ethics 
  13. モラル・バウンダリー: ケアの倫理と政治学 
  14. スピルオーバー――ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのか 
  15. Capacity for Welfare Across Species 
  16. The Scope of Consent 
  17. 反逆の神話〔新版〕: 「反体制」はカネになる
  18. 世界最先端の研究が教える すごい哲学 
  19. Animals, Work, and the Promise of Interspecies Solidarity 
  20. 宇宙倫理学入門 
  21. 動物倫理の最前線: 批判的動物研究とは何か 
  22. AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか
  23. バトラー入門 
  24. Uncommon Sense: Jeremy Bentham, Queer Aesthetics, and the Politics of Taste 
  25. 新版 日本の動物政策 
  26. 心理尺度構成の方法:基礎から実践まで 
  27. Animal Ethics in Context 
  28. 功利とデモクラシー:ジェレミー・ベンサムの政治思想 
  29. Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations

29/52(≒0.56)で、去年(0.41)より良い本に出会えてると思う。時間がなくて限りある中で読まなければならないためにそうなっている気はする。

太字の本について少しコメント。

  • 個人的にトップ3は、『バトラー入門』『Animal Ethics in Context』『功利とデモクラシー:ジェレミーベンサムの政治思想』。どれも方向性は違うが、素晴らしい内容だった。
  • 『私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か 』は、動物倫理の議論を心理学にちゃんと接続させようとしている姿勢がよかった。何より、非ヒト動物に対する我々の心理的特徴を明らかにしようとする一連の研究パラダイムが本書(など)を起点にしているので、その意義は大きかったのだと思う。
  • 『分析フェミニズム基本論文集』は、分析哲学的方法でフェミニズム的議論をする方法を垣間見せてくれたこと、またこれを翻訳してくれて本当にありがとうという気持ちがある。
  • 『客観性』は、科学における「客観性」の位置づけについて壮大なストーリーを描いており、私には内容の妥当性を検証する能力がないが、「客観性」に関する考えを深められたと思う。
  • 内容に同意するかどうかはともかく、議論の方法に感動していたのは『The Scope of Consent』かも。この手の分析系のセンスをもった議論は読むといつも感動してる。
  • 『クジラと話す方法』はAIを用いた動物への影響を考える上でとても示唆的だった。
  • 『宇宙倫理学入門』は、宇宙という広大なトピックの議論をするにあたり、どういう時間軸で話すかを明示的に設定して議論していて参考になった。
  • 『Uncommon Sense: Jeremy Bentham, Queer Aesthetics, and the Politics of Taste 』はベンタムの可能性を考える上で示唆的だった。

 

読んだ本


記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 (講談社選書メチエ 577)記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 (講談社選書メチエ 577)
読了日:01月22日 著者:谷口 忠大
未来社会と「意味」の境界: 記号創発システム論/ネオ・サイバネティクス/プラグマティズム未来社会と「意味」の境界: 記号創発システム論/ネオ・サイバネティクス/プラグマティズム
読了日:01月23日 著者: 
私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か
読了日:01月28日 著者:メラニー・ジョイ
〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か
読了日:01月29日 著者:朱 喜哲
クジラと話す方法クジラと話す方法
読了日:02月11日 著者:トム マスティル
分析フェミニズム基本論文集分析フェミニズム基本論文集
読了日:02月12日 著者: 
哲学的急進主義の成立 I: べンサムの青年期 (叢書・ウニベルシタス)哲学的急進主義の成立 I: べンサムの青年期 (叢書・ウニベルシタス)
読了日:03月02日 著者:エリー・アレヴィ
客観性客観性
読了日:03月06日 著者:ロレイン・ダストン,ピーター・ギャリソン
映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 (光文社新書)映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 (光文社新書)
読了日:03月14日 著者:稲田 豊史
抵抗する動物たち: グローバル資本主義時代の種を超えた連帯抵抗する動物たち: グローバル資本主義時代の種を超えた連帯
読了日:03月16日 著者:サラット・コリング
ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のことACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと
読了日:04月02日 著者:アンジェラ・チェン
信頼と裏切りの哲学信頼と裏切りの哲学
読了日:04月03日 著者:永守 伸年
心理学を遊撃する: 再現性問題は恥だが役に立つ心理学を遊撃する: 再現性問題は恥だが役に立つ
読了日:04月18日 著者:山田 祐樹
あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのかあなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか
読了日:04月24日 著者:レイチェル・ハーツ
ケアの倫理──フェミニズムの政治思想 (岩波新書 新赤版 2001)ケアの倫理──フェミニズムの政治思想 (岩波新書 新赤版 2001)
読了日:04月25日 著者:岡野 八代
情動と理性のディープ・ヒストリー:意識の誕生と進化40億年史情動と理性のディープ・ヒストリー:意識の誕生と進化40億年史
読了日:05月03日 著者:ジョセフ・ルドゥー
AIに意識は生まれるかAIに意識は生まれるか
読了日:05月05日 著者:金井 良太
Wild Animal EthicsWild Animal Ethics
読了日:05月11日 著者:Kyle Johannsen
愛の労働あるいは依存とケアの正義論愛の労働あるいは依存とケアの正義論
読了日:05月20日 著者:エヴァ・フェダー キテイ
モラル・バウンダリー: ケアの倫理と政治学モラル・バウンダリー: ケアの倫理と政治学
読了日:05月21日 著者:ジョアン・C・トロント
ケアリング・デモクラシー: 市場、平等、正義ケアリング・デモクラシー: 市場、平等、正義
読了日:05月23日 著者:ジョアン・C・トロント
スピルオーバー――ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのかスピルオーバー――ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのか
読了日:05月24日 著者:デビッド・クアメン
見えない未来を変える「いま」――〈長期主義〉倫理学のフレームワーク見えない未来を変える「いま」――〈長期主義〉倫理学のフレームワーク
読了日:06月03日 著者:ウィリアム・マッカスキル
Capacity for Welfare Across SpeciesCapacity for Welfare Across Species
読了日:06月12日 著者:Tatjana Viak
人工知能の哲学入門人工知能の哲学入門
読了日:06月18日 著者:鈴木 貴之
The Scope of ConsentThe Scope of Consent
読了日:06月25日 著者:Tom Dougherty
深層学習 改訂第2版 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)深層学習 改訂第2版 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)
読了日:06月28日 著者:岡谷 貴之
反逆の神話〔新版〕: 「反体制」はカネになる (ハヤカワ文庫NF)反逆の神話〔新版〕: 「反体制」はカネになる (ハヤカワ文庫NF)
読了日:07月12日 著者:ジョセフ・ヒース,アンドルー・ポター
世界最先端の研究が教える すごい哲学世界最先端の研究が教える すごい哲学
読了日:07月12日 著者:稲岡 大志,長門 裕介,森 功次,朱 喜哲
生成AIで世界はこう変わる (SB新書 642)生成AIで世界はこう変わる (SB新書 642)
読了日:07月15日 著者:今井翔太
人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 増補新版 (ちくま文庫 よ-31-2)人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 増補新版 (ちくま文庫 よ-31-2)
読了日:07月26日 著者:吉川 浩満
理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ (ちくま文庫)理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ (ちくま文庫)
読了日:07月30日 著者:吉川 浩満
AI・データ倫理の教科書AI・データ倫理の教科書
読了日:07月31日 著者:福岡 真之介
宇宙・動物・資本主義──稲葉振一郎対話集宇宙・動物・資本主義──稲葉振一郎対話集
読了日:08月03日 著者:稲葉振一郎
Animals, Work, and the Promise of Interspecies SolidarityAnimals, Work, and the Promise of Interspecies Solidarity
読了日:08月06日 著者:Kendra Coulter
宇宙倫理学入門宇宙倫理学入門
読了日:08月06日 著者:稲葉振一郎
動物倫理の最前線: 批判的動物研究とは何か動物倫理の最前線: 批判的動物研究とは何か
読了日:08月07日 著者:井上 太一
AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか (DOJIN選書)AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか (DOJIN選書)
読了日:08月16日 著者:江間 有沙
快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)
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読了日:12月31日 著者:Alasdair Cochrane

読書メーター

功利主義はどのように現実をみつめるのか

(お気持ち表明的な文章なので、以下の記述に飛躍や暗黙の前提はたくさんあると思う)

功利主義は最大幸福だけを求める薄っぺらい思想であり、何かと合理主義や資本主義と結び付けられ、人格の別個性を無視する浅はかな思想であり、マイノリティに抑圧的である、などと言われる。功利主義に対して否定的な哲学者、思想家は、このような功利主義に対して対抗的な立場を打ち出す。それは、その思想の構成要素それ自体に、上記にような批判を回避するための要素が組み込まれている。だから自身の理論が功利主義に対する批判を回避できるのは自明である。その分、その思想は分厚く、理論的なコミットメントが多くなる。

私は、功利主義が理論的に薄っぺらいことを認めたいと思う。例えば行為功利主義によれば、ある行為の正しさは、その行為のもたらす帰結に含まれる幸福の総和、そしてそれだけによって決まる。これほど理論的に単純明快な主張はないと思う。この点で功利主義は薄っぺらい。

しかし、批判者等も指摘するように、行為の正しさを知るうえで、その行為のもたらす帰結に含まれる幸福の総和を知らなければならないわけだが、これは非常に困難である。さらに功利主義の実践はときに困難であることもよく批判されている。私はここにこそ功利主義の分厚さがあると思う。このことを以下で示していきたい。

功利主義批判の典型例を見よう。例えば、よく指摘される事例として、臓器移植ケースを見てみよう。このケースでは、5人の人がそれぞれ別々の臓器移植を必要としており、そこに見ず知らずの他人が治療のために運び込まれてくる。いま医者であるあなたがこの人を殺して臓器移植をすれば5人が救われる。しかしこの人を殺さず治療して送り返せば、臓器移植を待っている5人は死んでしまう。この1人を殺しても誰にもバレず、他に悪影響も及ぼされないと仮定しよう。このような仮定によって、この1人を殺して臓器移植するのが最善になるから、功利主義によれば、殺して臓器移植することが道徳的に正しい行為である。しかし、これは直観的に受け入れがたい。

このような事例に対する功利主義からの反論を、ジェームズ・レイチェルズ&スチュアート・レイチェルズは『現実をみつめる道徳哲学』*1において三つにまとめている。

  1. 功利計算を正しく行えば直観に反する結論は出ない(功利計算の誤り)。
  2. 修正された功利主義を採用すれば直観に反する結論は出ない(功利主義の修正)。
  3. 直観は必ずしも信用できない(直観に反する結論の受け入れ)。

私が注目したいのは1や3のタイプの反論である。上の事例の仮定はかなり疑わしい。それはまさに、現実では考えにくい。例えば、第一に、「この1人を殺しても誰にもバレず、他に悪影響も及ぼされない」という仮定は現実ではありえない。第二に、背景にある制度がどのような制度になっているのかは暗黙の了解になっているが、いったいそれはどのような制度設計になっているのか不明である。第三に、この医者や、行為を補助する周辺の人々の気持ちや状況はどうなっているのか不明である。他にも問題点を指摘できるだろう。

功利主義を批判する人々はこのような議論に対して、おそらく以下の三つの反論のいずれかを採用できる。

  1. 現実的にありえない事例であっても、この事例で功利主義が反直観的な結論を出すのが問題なのだ。他方で自身の理論からはそのような含意はない、というよりむしろ、そのような含意が出ないよう設計されている。だから自身の理論のほうが直観的であり、その点で説得的である。
  2. そうやって思考実験の不明確な点を埋めなければ帰結を適切に評価できないという点で、功利主義は何が正しい行為なのか評価できないので問題である。他方で自身の理論は、そうした不明確な点を知らずとも結論を出せるので、その点で説得的である。
  3. 思考実験をより現実に近づけて、それでもなお功利主義からは反直観的な結論が出てくる。他方で自身の理論はそうした現実に近づけた事例であっても反直観的でない事例を出せるために、説得的である。

私は1と2のタイプの道は、その理論が現実に本当に適したものなのか、つまり、現実をみつめているのかを疑う。まず1のタイプの反論から検討しよう。この反論では、現実ではありえない事例で、理論が直観的な結論を出すと主張している。私は、それでいいのか、と言いたい。理由は二つある。第一に、そんな現実でありそうにない事例で適した含意を出せる理論が、現実をみつめた理論になっているとは思えない。第二に、そんなありえない事例ですぐに結論を出せるような理論でいいとは思えない。もっと事例をつぶさに見るような理論でないなら、その理論は、分厚いようでいて、事例のうちで見るべきところを見てないという点で薄っぺらいと思う。

次に2のタイプの反論について、こちらにも同様の指摘が当てはまる。つまり、そんなありえない事例ですぐに結論を出せるような理論でいいとは思えない。事例のうちで見るべきところを見てないから、現実をみつめてないから、そんな短絡的に結論を出せるのだと思う。

以上のように、何か現実的にありえない事例を持ってきて功利主義を批判するとき、実のところそれは功利主義が薄っぺらくないことを示しているのだと私は思う。功利主義は理論的に薄っぺらい。しかしそれを実践に適用した途端に、私達が知らなければならないことが膨大に増える。そのため、正しい行為を知るうえで、功利主義は認識的に過剰要求的である。集めるべき証拠は膨大であり、その証拠に基づいて幸福総和を計算、比較するために要求される推論もまた困難であるからである。

最後の3のタイプの反論は、もしそれが成功するなら、現実をみつめようとする点で良い反論だと思う。そのときにも功利主義が本当に反直観的な結論を出すか疑わしいが、たしかにそういうときもあるだろう。しかしむしろ、時には反直観的な結論を出してほしいと私は思う。

理論が完全に支持者の直観に適合的であるとき、私はそれは、単に保守的なだけの理論に過ぎないと思う。その理論は直観に完全に適合的であるから、理論はその支持者に態度の改善を要求しないだろう。私は道徳理論がこのような保守的なものであってはならないと思う。一部の倫理学者が述べるように、道徳理論は時に、私達の考えを改めさせる修正的役割を持っていなければならないと思う。功利主義はこの点で、他の理論と比較して強く修正的である。私は功利主義を支持するようになってから、幾度となく自分の直観を否定してきたし、修正もしてきた。いまだに反直観的だと思うような実践を功利主義が要求しているとき、できる限りそうしようとしてきた。加えて、最大の幸福を達成することは、自己犠牲を伴うためにしばしば困難である。そのため、功利主義は、実践的に過剰要求的である。自身の直観を否定し、自身の実践を自己犠牲を伴って大幅に変えることが要求されるからである。

功利主義がこのように、認識的にも実践的にも過剰要求的なのは、現実がまさに複雑であるからだと考える。先程の臓器移植ケースに戻ってこのことを考えよう。臓器移植ケースでは、様々なことが暗黙のものにされているが、しかし思考実験の提示者は功利主義批判を目的としているので、功利主義的に1人を殺して臓器移植することが正しくなるよう設計されていると考えるべきだろう。これは、功利主義の過剰要求的な部分を、思考実験の設計によって回避していることを示している。功利主義者がこの事例に対する答えを熟慮する必要がないように思考実験が設計されているため、証拠集めや推論は不要であり、医者であるあなたはこの行為を実践するうえでおそらく心理的負荷もそこまで高くないのだろう(あなたはその行為について黙っていられると想定されるのだから!)。したがってこのような事例では、功利主義がどのように現実をみつめているのかが全く現れてこない。それは思考実験に事前にすべて組み込まれている。

功利主義は、現実の問題について考える限りで、現実をみつめる。正しい行為を知るには、幸福総和に寄与する様々な要因を調べなければならない。そこで自身の素朴な直観は全く信用ならない。自身の行為がもたらす帰結を知るときに、直観が当てになる理由、認識的に信頼できるとする理由が、私には全くわからない。もちろん即座の判断が求められることはあるだろうし、そこで用いることができる方法が直観以外にないときはあるだろう。しかしそうではないなら、例えば効果的利他主義運動が示してくれたように、私達は貪欲に、現実について調べなければならない。幸福に寄与する要因はおそらく、些細なものから重大なものまで膨大にあり、多くのことを知らなければ、私達は正しい行為について知ることができない。私はこれは当たり前のことだと思う。どうして現実の多くを知らずに正しい答えがわかるのか、私には全くわからない。功利主義はこのことを真正面から受け止める。多くのことを知らずして、現実の複雑さを知らずして、正しい行為について知ることはできない。それでも私達がより良い行為を目指すのである限り、私達は現実をみつめ、よく調べ、熟慮しなければならない。功利主義はこのような仕方で現実をみつめている。

2023年に読んだ本

  • 全体を通して
  • 読んでよかった本(特によかったのは太字)
  • 読んだ本

 

去年の記事

mtboru.hatenablog.com

 

2023年の読書メーター
読んだ本の数:44
読んだページ数:13249(36/day)

月ごとの読書量の変化

 

全体を通して

今年はこれまでと比較して全く本を読めなかった。参考までに去年までのデータを載せると:

  • 2020年
    • 読んだ本の数:90
    • 読んだページ数:27810 (76/day)
  • 2021年
    • 読んだ本の数:136
    • 読んだページ数:43140(118/day)
  • 2022年
    • 読んだ本の数:102冊
    • 読んだページ数:29013ページ(79.5/day)

これらに対して今年は44冊しか読んでないので、本当に読んでない。代わりに論文を読みまくったのでよしとしたいところである。

とはいえ、本を読むのはやはり体系的な知識を得る上で重要だと感じる。例えば、今年読んだ本でベストだと思っているMüller (2022) "Kantianism for Animals"は、カントの徳論について詳しくなりながら、それをどう動物倫理に応用するかを学ぶ上でこれ以上いい文献を思いつかない。Müllerはカントの理論の問題点を指摘しつつ、その問題点がカント倫理体系全体にとって些末な部分であり、そこを修正することで非ヒト動物への配慮をカント倫理体系に含めることができる、という路線を取っている。これは、カントのテキストにそのまま基づくのではなく、批判しつつ発展させる、という、古典の応用として申し分ないものだと思うし、こうした研究プロジェクトの成果は本からしか得られないものだと思う。

また今年はベンサムを勉強した。功利主義倫理学での応用に関してはP・Singerがやはり参考になるわけだが、政治哲学での応用や、市民目線の行為功利主義ではどうしようもない部分について、制度設計・政策立案者の視点での功利主義を考える上ではベンサムに戻ることも大事なのではないかと考えており、今のところ自分の思考を広げられている。ベンサムの勉強は今後も続けていきたい。

 

読んでよかった本(特によかったのは太字)

  1. 今夜ヴァンパイアになる前に―分析的実存哲学入門―
  2. ベンサム―功利主義入門(再読)
  3. 私たちは学習している: 行動と環境の統一的理解に向けて
  4. 真理から存在へ:〈真にするもの〉の形而上学
  5. From Metaphysics to Ethics: A Defence of Conceptual Analysis
  6. 貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える
  7. The Ethics of Eating Animals: Usually Bad, Sometimes Wrong, Often Permissible (Routledge Research in Applied Ethics)
  8. ジェレミー・ベンサムの挑戦
  9. 道徳および立法の諸原理序説 上 (ちくま学芸文庫 ヘ-13-1)
    • 下巻もいいにはいいが、人によってはかなり退屈かもしれない。
  10. Kantianism for Animals A Radical Kantian Animal Ethic(オープンアクセス)
  11. 認識的不正義: 権力は知ることの倫理にどのようにかかわるのか
  12. ベンサム(ディンウィディ著)
  13. ベンサムとイングランド国制:国家・教会・世論
  14. ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理
  15. ジェンダー・トラブル 新装版 ―フェミニズムとアイデンティティの攪乱―
  16. Data Feminism (Strong Ideas)(オープンアクセス)
  17. 意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦 (筑摩選書 267) 
  18. 社会統治と教育―ベンサムの教育思想

18/44(≒0.41)で、去年(0.54)より良い本に出会えてないかもしれない。ただ、私のハードルがあがってると思う(以前までなら、おそらく『公衆衛生の倫理学』や『もうひとつの声で』なども入っていたと思う)。

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動物性愛は道徳的に許容可能である(Bensto 2023)

  • Introduction
  • 1. What Is Zoophilia?
  • 2. Debating Zoophilia
  • 3. Harm
  • 4. Consent
  • 5. Implications
  • Conclusion

書誌情報
Bensto (pseudonym), F. (2023) Zoophilia Is Morally Permissible. Controversial Ideas, 3, 5.
https://journalofcontroversialideas.org/article/3/2/255

参考*1
mtboru.hatenablog.com

Introduction

  • 動物との性行為(sex with animals)は社会的タブーになってる
    • これは間違いだと主張したい
  • 筆者としては、許容可能(permissible)なだけでなく、支持できる(case in its favor)とも思ってる
  • まず第1節で、動物性愛とは何かを明らかにする。第2節では、動物性愛の許容性をめぐる議論を紹介する。第3節と第4節では、動物性愛は有害なのか、動物は人間との性行為に同意できるのかという問題を取り上げる。第5節では、いくつかの重要な含意を明らかにする。

*1:他にも日本語で参照できる本として以下を参照。

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動物性愛・ヒト-非ヒト動物間の性的行為に関する規範的議論の文献リスト

  • はじめに
  • 文献一覧
    • 1. Beirne, P. (1997). Rethinking bestiality
    • 2. Singer, P. (2001). Heavy petting.
    • 3. Beirne, P. (2001). Peter Singer's``Heavy Petting''and the Politics of Animal Sexual Assault.
    • 4. Levy, N. (2003). What (if anything) is wrong with bestiality?.
    • 5. Milligan, T. (2011). The wrongness of sex with animals.
    • 6. Rudy, K. (2012). LGBTQ… Z?.
    • 7. Taylor, C. (2017). “Sex without All the Politics”?: Sexual Ethics and Human-Canine Relations.
    • 8. Bensto (pseudonym), F. (2023) Zoophilia Is Morally Permissible. Controversial Ideas, 3, 5.

2023-7-30:記事公開

2023-12-24:論文を一本追加

はじめに

※性的な言葉や、強く不快な言葉が出てきます。注意してください。

私が現時点で把握してる(かつアクセス可能かつ既読の)動物性愛(zoophilia)やヒト-非ヒト動物間の性的行為が道徳的に許容できるかについて、規範的な議論をしている文献を以下に紹介する。また各文献の内容についてざっくりと説明する。なお、各議論が成功してるかどうかについての評価はしない。また、動物性愛者に関する記述的な文献(どれくらいいるのか、どのようなセクシュアリティなのかなどの事実的な調査、分析)については膨大にあるので、以下には載せていない。

なお、日本語で読める動物性愛の文献としては以下のものがある。動物性愛についての記述の正確さは不明だが、あまり問題なかったように思う。一方で動物権利活動家らに対する記述はあまりに粗雑で不当に否定的であり、残念に思う。

 

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外部ツール使いまくりの研究方法(論文を探す、読む、書く)

2024/7/16:追記

 

研究のやり方がほぼ定着して、今のところうまく機能しているので、改善方法の探索も兼ねて言語化しておく。

なお、私は人文系(特に哲学)と情報科学系(特にNLP)の両方で研究しており、それらを統一的な方法でやりたいと考えている。よって、以下に書く方法が一般化可能だとはあまり思ってない。

 

論文を探す

論文の探し方は、自発的に探す方法と、自動推薦・通知ツールを使う方法と2種類ある。

自発的に探す

人文系・情報系双方で主に用いている検索ツールは以下の通り

情報系の場合はさらにarXiv、人文系(特に哲学系)の場合はPhilpapersも時々用いている。

私は主にGoogle Scholarをメインに用いており、2つの方法がある。

  1. 自分が調べたいキーワードで検索する。大抵は候補が多すぎるので、キーワードを増やしたり、ダブルクオーテーションで検索ワードをかこって完全一致検索をかけることで、候補を減らしている。
  2. 自分が重要だと思う論文の引用文献を、検索ワードと共に探す。

自分がある程度知ってる分野なら2がうまくいく。1は、まだ分野に明るくなく、ざっくり検索したいときに使っている。

Elicit自然言語で検索することができ、かつ候補論文の要旨を要約して表示してくれる。Google Scholarなどでは見つけられなかった論文を提示してくれることがあるのと、自然言語で検索できる(かつ改良された検索フレーズを提示してくれる)ので、時々用いている。これは全く知らない分野の論文を探す時に便利。使用方法については以下のサイトが参考になる。

www.syero-chem.com

 

Incitefulは論文ネットワークを可視化するツールである。複数の論文(5本以上が推奨)を選択すると、それと参照関係にある論文を可視化し、提示してくれる。似たようなサービスにConnected Papersがあるが、Incitefulは無料で使えて、複数の論文からネットワークを可視化することが容易なので、こちらの方が使いやすい。

 

自動推薦・通知ツール

ここでも同じくGoogle Scholarが便利。主に使ってる機能は2つある。

  1. 特定の論文が引用された時に、その引用した論文を通知させる
  2. マイ・ライブラリに登録した論文をもとに、自動で論文を推薦・通知させる

特に1は重要で、私が必須級の論文だと考えてるもの、かつ分野横断的には引用されないような論文を通知設定している。分野横断的に引用されるような論文だと通知が多くなり、また自分に無関係な論文が通知されてしまうため。

2の機能は補助的に用いている。たぶんラベルを駆使すれば推薦精度も上がるのだろうが、そこまでのコストを掛ける気になれないのでラベルは使用していない。

 

論文を読む

読む時に使用しているツールは以下の通り。

Zoteroは概ね無料で使える文献管理ツールで、ブラウザの拡張機能等を通じていろいろでき、主にPDF資料の保存のために使ってる。Zotero自体のストレージが小さいので(有料で拡張可能)、Google Driveと連携させている。Zoteroの使い方は検索すればいろいろ出てくるので、調べてみると良いと思う。

Zoteroでは、論文をフォルダ分けすることができ、またメモを作れる。私はフォルダを「未読」「読書中」「既読」の三つにしている。論文を分野・トピックごとにフォルダ分けするのは私には全く合わなかったので、MECEな分類になるようにしている。メモ機能は優れてないので、代わりにScrapboxを用いている。そして論文の分野・カテゴリ分けはScrapboxにまかせている。

Scrapboxは少し特殊な構造をしてるノートツールである。完全クラウドかつ無料で用いることができる。Scrapboxの特殊さは以下のような感じだと思う。

  • メモ間の階層構造はなく、メモのカテゴリはすべてタグで管理する
  • 完全クラウドかつ個人利用では無料(この点が似たようなサービスのObsidianと違うところ)
  • 他のメモが2-hopリンクで表示される(そのメモ参照するリンクと、そのメモ参照するリンクの両方を表示する)
  • Scrapbox特有の記法が存在(Obsidianはmarkdown

私がScrapboxを利用してる主な理由は上2つで、似たようなサービスであるObsidianを使ってない理由でもある。また論文を分野・トピックごとにMECEに分類するのは私には不可能だったので、複数のタグで、かつネットワーク的に管理できるのがいい。また完全クラウドで、URLでメモを参照できるため、上記で紹介したZoteroのメモ欄にScrapboxのリンクを貼り付けている(以下の画像はZotero上の画面)。

Zotero上の画面、Scrapboxのリンクがメモ欄に表示されている

代替ツールとしてNotionもいいかもしれないが、Scrapbox+Zoteroがシンプルに使えて、こちらの方が私には適合していた。

 

DeepLは性能のいい機械翻訳ツールである。私はPro版に登録して使っている。専門用語に弱いと言われてるが、Pro版の辞書機能を用いることである程度は解決できる。また私はDeepLを登場初期から用いているため、翻訳のクセがなんとなくわかり、誤訳・抜け訳等がある程度はすぐわかるようになった。DeepLを用いる場合は誤訳等を見つけるために原文を自分で(辞書等用いて)読んで理解できる必要がある。原文で読むのは時間がかかること、またメモを作る際にDeepLの訳文(を少し修正したもの)を貼り付けるのが楽なので、頻繁に用いている。

哲学の論文とNLPの論文では、DeepLで読むときの注意の仕方が全く違う。哲学の論文では細かな表現が重要になるため、誤訳にかなり注意している。そのため、原文と見比べることを頻繁に行っている(その結果余計に時間がかかることもあるが、私の場合はトータルでは訳文を見る方が早く読める)。一方でNLPの論文の場合は、大雑把なメモを作ろうとしているのもあるが、実験目的・方法・結果を適切に把握できる程度であればいいため、そこまで注意してない。また図表もあるため、DeepLを用いずとも理解可能なことが多い。

追記(2024/7/16):最近はDeepLの使用が減り、GeminiやChatGPTなどを利用してる。これらのLLM(大規模言語モデル)サービスでは、プロンプトを良い感じに設計することでDeepLより望ましい翻訳文を得られる。LLM利用の問題は、入力文章がサービス提供側(Google、OpenAI)に保存され、AIの学習に用いられてしまうことである。DeepLはPro版であればデータは保存されないので、この点で優れている。そのため、著作権的な問題があるときや、自分の論文の文章などが利用されたくないときにはDeepLを用いて、それ以外ではGeminiやChatGPTを使っている。もちろん、GoogleやOpenAIは、入力データを学習データから除外するというオプションを用意してるが、全く信用できない。この点、Anthoropic(LLMはClaude)の方がまだ信用できる。

 

論文を書く

英語でも日本語でも論文を書くが、日本語の場合は英語用に用いているツールを使わないだけである。

私は基本的にLaTeXを用いて論文を書くのだが、ローカルで環境を整えるのが面倒なので、すべてOverleafで完結させている(テンプレートが用意されているときのみCloudlatexを稀に用いる)。Overleafでは日本語対応が少し面倒だが、それを気にしなければ有用な点が多い。LaTeXについて説明するのは大変なのと、私も詳しくないので、知りたい場合は検索するか、以下の本などを読んでほしい。

 

DeepLは先ほど説明した通り。DeepL Writeは最近でたばかりの言い換えツールで、入力文を自然な言い回しにしてくれる。ただBeta版なのもあり、出力される情報量が少なく、言い換えのコントロールも難しいので、使いにくい。言い換えツールは他にもいろいろあるが、すでにDeepLのPro版に登録して、さらに有料言い換えツールにお金を使いたくないので、諦めている。

追記(2024/7/16):DeepL Writeが、無料版では学習データに使われてしまうようになり、有料版に登録するのもお金がかかるので、最近は使ってない。今は言い換えサービスでより良いものを探してる。

Grammalyは文法チェックツールで、自動で英文の文法誤りを訂正してくれる。またPremiumに登録すれば、他にも明瞭さ、繰り返し、受動態の修正などもしてくれる。割引を狙えば50%OFFくらいで登録できるので、そこを狙って登録すると良いと思う。

英語で論文を書くときはこれらのツールを駆使しつつも、自分で最初から英文を書いたりもしている。日本語で書く場合、Overleaf以外は使ってない。

 

他におすすめのツール、方法があれば教えてください。