- Introduction
- 1. What Is Zoophilia?
- 2. Debating Zoophilia
- 3. Harm
- 4. Consent
- 5. Implications
- Conclusion
書誌情報
Bensto (pseudonym), F. (2023) Zoophilia Is Morally Permissible. Controversial Ideas, 3, 5.
https://journalofcontroversialideas.org/article/3/2/255
Introduction
- 動物との性行為(sex with animals)は社会的タブーになってる
- これは間違いだと主張したい
- 筆者としては、許容可能(permissible)なだけでなく、支持できる(case in its favor)とも思ってる
- まず第1節で、動物性愛とは何かを明らかにする。第2節では、動物性愛の許容性をめぐる議論を紹介する。第3節と第4節では、動物性愛は有害なのか、動物は人間との性行為に同意できるのかという問題を取り上げる。第5節では、いくつかの重要な含意を明らかにする。
1. What Is Zoophilia?
- 〔この論文では〕動物性愛(zoophilia)によって、人間が(非ヒト)動物との恋愛的(romantic)かつ/または性的(sexual)な関係に入ることを意味する
- 単なるフェチではない
- いくつかのコメント
- 第一に、動物性愛はさまざまな恋愛や性行為を対象とする。行為もいろいろ
- 第二に、動物性愛者の可能性として、性行為以外もあるが、道徳的に問題になってるのは性行為なので、これに焦点をあてる
- 第三に、動物と恋愛関係になることに疑問があるかもしれない。犬は恋愛感情をもてるのか?という問題など
- 第四に、動物性愛には指向がいろいろある、人間に惹かれることもある
- 動物性愛は、特に目に見える性的な要素において、広く社会的排斥の対象となっている
- 動物性愛に対するこのような社会的コンセンサスにもかかわらず、多くの社会で動物性愛の実践や表象の証拠が存在する*2
- 一般人口における動物性愛の有病率を明らかにすることは困難だが、農村部では多くなる傾向
- 農村部で多くなってる大きな要因の一つは、動物へのアクセスがあるから
- 一般人口における動物性愛の有病率を明らかにすることは困難だが、農村部では多くなる傾向
- 動物と性的行為をする人の多くは、厳密に言えば動物性愛を指向しているわけではないが、動物を人間の性的パートナーの代理として利用している。
- 対照的に、動物性愛は他の人々にとってはより本格的な性的指向。
- 社会運動も(https://zooey.pub/we-aren-t-your-debate/)
2. Debating Zoophilia
- 動物性愛の倫理はほとんど注目されてこなかった
- Singerなどは既存の議論の欠陥を指摘してるが、動物性愛が許されるものだと主張するには至っていない(https://www.prospectmagazine.co.uk/opinions/56258/heavy-petting)
- 筆者の主張はより強く、許容可能で、悪くないと主張したい
- そのために、広く、反種差別、または非人間中心的観点をとる
- 通常、動物性愛は関係の「人間側」に焦点を当て、動物性愛は悪徳であり、性的倒錯であるとか、キリスト教的道徳や人間の本質に反するものであるとされる
- 動物性愛が人間中心主義的なアプローチの中で擁護できないと言っているのではない。楽な方法は、動物は道徳的地位をもってるとしても低いので、利用するのは許される、という議論
- だがこの前提は受け入れたくない
- 動物性愛の中には間違ったものもあるが、これは、異性愛の許容性と同じように、動物性愛のすべての事例が許されるということではない、ということに過ぎない
- この事例が示すのは、動物性愛と、普通の人々がペットと持つ愛情深い関係との間に連続性があるということ。ではなぜ一方を認めず他方を認めないのか?
- 2つの疑問が支配的なのでこれを扱う。危害と同意
3. Harm
- 危害が及ぶのでは?
- ウサギやニワトリへの挿入行為は、動物をひどく傷つける可能性が高いので、そうかも。
- だがこれだけで動物性愛が間違ってることに十分ではない。動物性愛を批判する人々が示さなければならないのは、動物への危害が動物との性行為に必要な特徴であるということ
- アリスケースのように、そういうのを引き起こさないことがありうると思われる
- 動物に害をもたらす他の方法があると主張することもできる。福利に長期的な悪影響があるとか
- だが害のリスクは、性行為を間違ったものにするかも。
- この議論(無知からの議論と呼ぼう)は、動物の内面に関する我々の知識を特に悲観的に見るか、あるいは予防原則を徹底することを前提としている。
- 動物性愛を批判する人々が立証しなければならないのは、動物との性行為は動物の長期的福利にとって常にリスクが高すぎるということ。これを支持する議論は今のところない。
- またなぜ性的行為だけに適用されるのか不明。動物と性行為をするときに害を及ぼすリスクが十分に高いのであれば、動物と他の種類の関わりを持つときにも十分に高くはないだろうか。
- 動物の気持ちを理解するのは容易ではないため、私たちが動物に細心の注意を払うべきだということには同意する。
- 子どもとの性的行為の類推。将来に危害を加える危険がある
- 子どもの場合はそうだ*5
- だが同じことが動物性愛に関しては成り立たない
- 危害的になりうるより微妙な方法は、Pierceが主張するように、搾取の一形態だとすること*6
- だがPierceはそれを裏付けるようなことはほとんど述べておらず、また不当な扱いが動物との性行為で広まってるわけではないようである
- 動物性愛は動物の尊厳を低下させると主張されることもあるが、動物に尊厳があるのかどうかわからない
- 仮にあるとして、それが性的インテグリティに関わるとして(Bolliger and Goetschel, 2005)*7、「妨げられない性的発達と感覚、依存性の性的搾取による有害な意思決定からの保護、セクシャル・ハラスメントからの保護」を意味するとしても、動物性愛がその価値を必然的に損なわせるとは限らない
- かれらはおそらく、自由な性的発達は同種の性的関係において最もよく発揮されると考えているのだろうが、なぜそうなるのだろうかわからない。
4. Consent
- 同意の懸念
- 第一に、同意は自立の権利の尊重で、問題のない性的行為の必要条件
- 第二に、動物は性的行為に同意しない、またはできない
- 同意を倫理的にvalidにしてるものを考えよう
- ベーシックには、同意とは、特定の活動に従事することに同意する自発的な(つまり強制されていない)言語的もしくは行動的意思表示、またはこの意思表示によって示される心的態度と定義できる
- 動物が同意できる活動はあるか?
- 例:鹿を偶然見つけて、食べ物を渡そうとして、鹿が近づき、与えたとすれば、これは、鹿が私に餌を与えられることに同意している証拠だと考えていいだろう。動物は様々なコミュニケーションをする
- 犬であればplaybowとか
- 動物が表現しようとすることに十分な注意を払うことで、動物の欲求や意図を確実に評価できる状況は幅広く存在する。
- 動物が同意できる活動はあるか?
- ここで無知からの反論がこの議論に抵抗するかも。
- 動物が同意してるかどうか評価できない。動物はYesともNoとも言えないから。
- だが、動物とのコミュニケーションの不可能性に関するこのような主張は、筆者には明らかに説得力がない。これは動物の行為者性を否定する、より一般的な根深い傾向に起因してると思われる。
- 強制されてない同意のサインだけでは不十分かも
- 第一の追加候補は危害の有無だが、これは前節で議論した
- 第二に、同意した個体が動物にはない特定の能力や地位を有している場合にのみ、同意は有効かも
- この議論の問題
- 1:この能力が何なのか、なぜ同意が有効であるために必要なのかが不明確
- 2:それは意識や自由意志がそのような能力だと考えるかもしれない5。しかし、前者は多くの動物と共有される能力であり、後者は人間自身が持っているかどうかについて多くの議論がある。
- この議論の問題
- 別の能力:道徳的責任や権利を意図的に放棄する能力
- だがこれは、他の多くの種類、遊びとかの相互作用を禁止することになる。そうなると、動物との関わりを規制する基準として、有効な同意は疑わしいものとなってしまう。
- 要するに、要求される能力が動物の性行為に対する同意の有効性を脅かさないか、有効な同意が動物との交流には不要であり、その場合は動物との性行為の許容性を脅かすものではない
- 第三に、有効な同意は、同意する個人が、同意する活動、他の参加者の身元、またはその結果について適切に知らされていることを必要とする場合がある。
- 例:実は他の目的に使われるが、それを隠して同意を取る場合など。これ無効な同意だ
- 同様に、性的相互作用の重要な特徴について、欺瞞などが同意を無効にすると考えられてきた。
- 一般に、誤った情報が問題となるのは、同意した個人が適切に知らされていれば同意しなかったであろう場合であると考えられることが多い。
- 例:実は他の目的に使われるが、それを隠して同意を取る場合など。これ無効な同意だ
- 動物との性行為の同意では、誤った情報があるのか?この意味でのそれがあるのか?
- 私はそのような誤った情報が人間と動物の性行為の目立った特徴であると考える理由を見つけられない
- これは動物の理解能力のなさにもよるだろう。
- しかし、これは問題ではない。なぜなら、私たちが把握する能力を持たない情報は、取引条件にはなり得ないからだ。
- 私はそのような誤った情報が人間と動物の性行為の目立った特徴であると考える理由を見つけられない
- 次のケースを考えよう
- ボブと彼の犬: ボブは犬を愛している。毎週金曜日、仕事で疲れて帰ってくると、彼は〇〇に蜂蜜を塗り、愛犬に舐めさせることに喜びを感じる。
- ボブの愛犬は、彼が行っている行為が性的なものであることに気づいていないかもしれず、そのことが同意の有効性を脅かすと直観的に考えるかもしれない。
- ボブの行為が性的なものであることが契約違反になるのであれば、その通りである。だが明白ではない。
- 人間は性的なものを特殊なものに見てるが、動物にとって性行為に特別な意味はない。
- 動物にとって何が契約違反になるかを判断し、それによって動物たちの同意が十分な情報を得たものであるかどうかを判断する際には、注意を払う必要がある
- ボブの行為が性的なものであることが契約違反になるのであれば、その通りである。だが明白ではない。
- 第四に、有効な同意には平等な権力が必要かもしれない。
- 特にペットや家畜の場合、人間が動物の生活(動物の存在、生活条件、繁殖条件など)を支配しているのは事実。なので支配構造の中で行われる
- この議論の問題は、権力の非対称性自体は同意の正当性を損なうものではないということ。重要なのはむしろ、それが同意にどのような影響を与えるかである
- MacKinnonは、性的相互作用がレイプとみなされるためには、「不平等の利用」がなければならない、すなわち、後者が「性的な場における力や強制の形態として展開されなければならない」と指摘
- 力の不平等を利用することが具体的に何を意味するのかは不明だが、やはり動物との性行為での顕著な特徴であるとは考えにくい。
- この点について説得力のある反論がない以上、この反論は成り立たない。
- 結局、動物は人間との性行為に同意できる
5. Implications
- 以上が正しければ、動物権利運動の大多数が誤ってることになる
- 一つの含意は、動物性愛は法的に許されるべきものだということ。性的指向としても受け入れることになるかもしれない。
- だが、道徳的に許容されるのを認めつつも、非犯罪化や正常化には反対するかもしれない。動物との有害な関係が増えるかもしれない、などで。社会的デスティグマ化の影響などもあるし、公衆衛生への問題もあるだろう
- このような変化の可能性を可能な限り有益なものにするためには、動物の福祉と権利を重視することが必要
- これを実現するには、動物愛護運動だけでなく、一般市民や意思決定者の十分な割合が、動物性愛に対するイデオロギー的なUターンを行い、動物性愛を性的逸脱と見なすことから脱却しなければならないだろう。
- だが慎重になされるべき。道徳的怒りが非常に大きいから。
- 動物との性行為の許される例と許されない例の境界線を詳細に描き出す野心は筆者にはなかった。
- 性行為に開放的な動物を売春させたり、動物愛好家のために選択的に繁殖・飼育するような社会制度を作ることは、動物の命を商品化することであり、害がなく、動物が正当な同意をしているとしても、好ましくないことのように思われる。
- 強化学習によって、特定の性行為の準備や実行を意図的に条件付けられた動物は、私が触れていない特定の異議を提起するかもしれない。
- 受動的同意(passive consent)とは、同意の積極的な行動表示がなされず、動物が性行為に無関心に見えることで、せいぜい暗黙の同意にすぎない。
- これは、肯定的同意や積極的(enthusiastic)同意が倫理的に唯一適切なものであると考えられてきたことと矛盾する。
- このようなボーダーラインに位置するケースや議論を呼ぶケースは、他の多くのケースと同様、このテーマに関する今後の研究に委ねたい。
Conclusion
要約
*1:他にも日本語で参照できる本として以下を参照。
*2:
*3:あんまりにも直接的な表現なので、原文を参照のこと。大まかには二人とも楽しんでいるという事例
*4:動物性愛者の団体ZETAの運動のことだろうと思われる。
*5:注34で、大人と子どもとの性的行為では長期的に有害だという見解が支配的だという文献を紹介。
*6:Pierce, J. (2016). Run, Spot, Run: The Ethics of Keeping Pets. University of Chicago Press, chap 31.
*7:Bolliger, G., & Goetschel, A. F. (2005). Sexual relations with animals (zoophilia): An unrecognized problem in animal welfare legislation. In A. M. Beetz & A. L. Bodberscek (Eds.), Bestiality and Zoophilia: Sexual Relations with Animals. Purdue University Press, p. 24.