去年の記事
2023年の読書メーター
読んだ本の数:44
読んだページ数:13249(36/day)
全体を通して
今年はこれまでと比較して全く本を読めなかった。参考までに去年までのデータを載せると:
- 2020年
- 読んだ本の数:90
- 読んだページ数:27810 (76/day)
- 2021年
- 読んだ本の数:136
- 読んだページ数:43140(118/day)
- 2022年
- 読んだ本の数:102冊
- 読んだページ数:29013ページ(79.5/day)
これらに対して今年は44冊しか読んでないので、本当に読んでない。代わりに論文を読みまくったのでよしとしたいところである。
とはいえ、本を読むのはやはり体系的な知識を得る上で重要だと感じる。例えば、今年読んだ本でベストだと思っているMüller (2022) "Kantianism for Animals"は、カントの徳論について詳しくなりながら、それをどう動物倫理に応用するかを学ぶ上でこれ以上いい文献を思いつかない。Müllerはカントの理論の問題点を指摘しつつ、その問題点がカント倫理体系全体にとって些末な部分であり、そこを修正することで非ヒト動物への配慮をカント倫理体系に含めることができる、という路線を取っている。これは、カントのテキストにそのまま基づくのではなく、批判しつつ発展させる、という、古典の応用として申し分ないものだと思うし、こうした研究プロジェクトの成果は本からしか得られないものだと思う。
また今年はベンサムを勉強した。功利主義の倫理学での応用に関してはP・Singerがやはり参考になるわけだが、政治哲学での応用や、市民目線の行為功利主義ではどうしようもない部分について、制度設計・政策立案者の視点での功利主義を考える上ではベンサムに戻ることも大事なのではないかと考えており、今のところ自分の思考を広げられている。ベンサムの勉強は今後も続けていきたい。
読んでよかった本(特によかったのは太字)
- 今夜ヴァンパイアになる前に―分析的実存哲学入門―
- ベンサム―功利主義入門(再読)
- 私たちは学習している: 行動と環境の統一的理解に向けて
- 真理から存在へ:〈真にするもの〉の形而上学
- From Metaphysics to Ethics: A Defence of Conceptual Analysis
- 貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える
- The Ethics of Eating Animals: Usually Bad, Sometimes Wrong, Often Permissible (Routledge Research in Applied Ethics)
- ジェレミー・ベンサムの挑戦
- 道徳および立法の諸原理序説 上 (ちくま学芸文庫 ヘ-13-1)
- 下巻もいいにはいいが、人によってはかなり退屈かもしれない。
- Kantianism for Animals A Radical Kantian Animal Ethic(オープンアクセス)
- 認識的不正義: 権力は知ることの倫理にどのようにかかわるのか
- ベンサム(ディンウィディ著)
- ベンサムとイングランド国制:国家・教会・世論
- ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理
- ジェンダー・トラブル 新装版 ―フェミニズムとアイデンティティの攪乱―
- Data Feminism (Strong Ideas)(オープンアクセス)
- 意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦 (筑摩選書 267)
- 社会統治と教育―ベンサムの教育思想
18/44(≒0.41)で、去年(0.54)より良い本に出会えてないかもしれない。ただ、私のハードルがあがってると思う(以前までなら、おそらく『公衆衛生の倫理学』や『もうひとつの声で』なども入っていたと思う)。
読んだ本
今夜ヴァンパイアになる前に―分析的実存哲学入門―
読了日:02月03日 著者:L・A・ポール
ベンサム―功利主義入門
読了日:02月05日 著者:フィリップ・スコフィールド,Philip Schofield
私たちは学習している: 行動と環境の統一的理解に向けて
読了日:02月16日 著者:澤 幸祐
真理から存在へ:〈真にするもの〉の形而上学
読了日:02月18日 著者:秋葉 剛史
From Metaphysics to Ethics: A Defence of Conceptual Analysis
読了日:02月18日 著者:Frank Jackson
公衆衛生の倫理学 ――国家は健康にどこまで介入すべきか (筑摩選書 244)
読了日:03月16日 著者:玉手 慎太郎
貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える
読了日:03月28日 著者:アビジット・V・バナジー,エステル・デュフロ
もうひとつの声で──心理学の理論とケアの倫理
読了日:04月28日 著者:キャロル・ギリガン
The Ethics of Eating Animals: Usually Bad, Sometimes Wrong, Often Permissible (Routledge Research in Applied Ethics)
読了日:05月27日 著者:Bob Fischer
データ管理は私たちを幸福にするか? 自己追跡の倫理学 (光文社新書)
読了日:06月03日 著者:堀内 進之介
Animal Liberation Now
読了日:06月13日 著者:Peter Singer
トランスジェンダー問題――議論は正義のために
読了日:06月21日 著者:ショーン・フェイ
怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会 (講談社学術文庫)
読了日:06月29日 著者:土屋 恵一郎
ジェレミー・ベンサムの挑戦
読了日:07月07日 著者:
AIと人間のジレンマ : ヒトと社会を考えるAI時代の技術論
読了日:07月09日 著者:中尾 悠里
「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える (光文社新書)
読了日:07月10日 著者:佐藤 岳詩
聖なるズー (集英社文庫)
読了日:07月14日 著者:濱野 ちひろ
道徳および立法の諸原理序説 上 (ちくま学芸文庫 ヘ-13-1)
読了日:08月08日 著者:ジェレミー・ベンサム
イギリスのモラリストたち
読了日:08月13日 著者:柘植 尚則
Kantianism for Animals: A Radical Kantian Animal Ethic (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series)
読了日:08月15日 著者:Nico Dario Mueller
犬だけの世界: 人類がいなくなった後の犬の生活
読了日:08月22日 著者:マーク・ベコフ,ジェシカ・ピアス
トランスジェンダー入門 (集英社新書)
読了日:08月22日 著者:周司 あきら,高井 ゆと里
アレックスと私 (ハヤカワ文庫NF)
読了日:09月07日 著者:アイリーン・M・ペパーバーグ,Irene Maxine Pepperberg
Making Ai Intelligible: Philosophical Foundations
読了日:09月08日 著者:Herman Cappelen,Josh Dever
認識的不正義: 権力は知ることの倫理にどのようにかかわるのか
読了日:09月20日 著者:ミランダ・フリッカー
道徳および立法の諸原理序説 下 (ちくま学芸文庫)
読了日:09月23日 著者:ジェレミー・ベンサム,中山元
ベンサム
読了日:10月06日 著者:J.R. ディンウィディ
ベンサム (イギリス思想叢書)
読了日:10月11日 著者:永井 義雄
ベンサムとイングランド国制:国家・教会・世論
読了日:10月23日 著者:小畑 俊太郎
生き延びるためのラカン (ちくま文庫)
読了日:10月27日 著者:斎藤 環
ラカン入門 (ちくま学芸文庫)
読了日:10月28日 著者:向井 雅明
デリダ 脱構築と正義 (講談社学術文庫)
読了日:10月28日 著者:高橋 哲哉
これがニーチェだ (講談社現代新書)
読了日:10月29日 著者:永井 均
ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理
読了日:10月31日 著者:ケイト・マン,Kate Manne
ジェンダー・トラブル 新装版 ―フェミニズムとアイデンティティの攪乱―
読了日:11月01日 著者:ジュディス・バトラー
ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)
読了日:11月05日 著者:重田 園江
Testimony, Trust, and Authority
読了日:11月11日 著者:Benjamin Mcmyler
監獄の誕生 ― 監視と処罰
読了日:11月13日 著者:ミシェル・フーコー
Data Feminism (Strong Ideas)
読了日:11月14日 著者:Catherine D'Ignazio,Lauren F. Klein
意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦 (筑摩選書 267)
読了日:12月13日 著者:次田 瞬
プラグマティズム入門 (ちくま新書)
読了日:12月17日 著者:伊藤 邦武
大規模言語モデルは新たな知能か――ChatGPTが変えた世界 (岩波科学ライブラリー)
読了日:12月25日 著者:岡野原 大輔
京大哲学講義 AI親友論
読了日:12月26日 著者:出口康夫
社会統治と教育―ベンサムの教育思想
読了日:12月30日 著者:小松 佳代子
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