1.2 Anti-anthropomorphism
- 比較心理学、比較認知学の主要な教科書で擬人化の禁止が書かれている
- 擬人化禁止の二つの解釈
- 1:素朴心理学を避けること
- 2:心理学的性質の不当な帰属を避けること
- 以下では、これは有害な原則であり、科学的調査の一般的な原則にとって代わるべきだと議論する
1.2.1 Anti-anthropomorphism as Avoid Folk Psychology
- [まず最初の解釈、素朴心理学を避けることとしての反擬人化主義の検討]
- 擬人化と素朴心理学が混同されてる
- 素朴心理学とは?
- チャーチランド:信念や欲求を含む概念からなる「心理現象の常識的概念」
- 機能主義:解釈の枠組みの中で因果的な力を持つ構成概念
- 志向システム:素朴心理学の概念と一般化が現実の行動パターンを摘出するが物理的な因果的要素は摘出しない
- 筆者としては、機能主義的または志向システムとしての素朴心理学に訴えることが必要だと考えている
- 動物認知の用語は素朴心理学からきてる
- 例:"Affiliative relationship" は "friendship" から、 "episodic-like memory" は "memory" から、 "aversive" は "fear" と "dislike" から
- 動物認知の用語は素朴心理学からきてる
- 行動をまとめて研究する上で、機能的に類似した異なるパターンの動きを同じ行動タイプとして分類したい
- 機能的類似性は、比較認知研究において種を超えて行動を研究するために重要だと提示されてる[ので、人間にだけ素朴心理学用語を適用しようとするのは不適切で、比較が難しくなる]
- 素朴心理学を放棄すると、比較心理学者を消去的唯物論者に変えてしまい、人間心理に関しても消去主義を採用しない限り人間と他の動物を比較することが不可能になる[よって、素朴心理学を避けるものとしての反擬人化主義に反対すべき]
1.2.2 Anti-anthropomorphism as Avoid Unjustified Attributions
- [次に二つ目の解釈の、心理学的性質の不当な帰属を避けることとしての反擬人化主義の検討]
- 不当な帰属をそもそも避けるべきなのだから、擬人化禁止としてわざわざそれを提示するのは何の参考にもならない
- またこの原則の問題は、どれが擬人化された性質なのかを前経験的に特定する方法がないこと
- もし人間に特有の性質であれば、その性質を利用して人間以外の動物の行動を説明するべきではない[つまり擬人化を避けるべき]、ということに同意できるかもしれない
- しかし、ある性質が人間特有のものであるという主張を正当化することは、調べたが人間以外の動物では見られなかったと言うことだが、これは結果であるべきで、前経験的にわかることではない[よって、心理学的性質の不当な帰属を避けるものとしての反擬人化主義にも反対すべき]
- そうだとしても、反擬人化主義は有用だとも言われる。次にこれを検討する
1.2.2.1 Operationalize Vocabulary.
- 反擬人化原則のおかげで、用語を操作的に定義しようとするかもしれない
- それは[場合によっては]よいことだが、人間にだけ古い用語[素朴心理学用語]を適用し続けると、比較の際に不必要な問題が生じる
- 前述のように、[機能主義的]素朴心理学用語の使用を否定すると、機能的類似性に頼らずにヒトと非ヒト動物の行動をまとめて一つのカテゴリーに分類することが困難になる
- 例:アルツハイマー病治療薬の効果を確かめるためにラットを使う場合、そこに機能的類似性がなければどうやって人間と比較するのか?[できないだろう]
- このようなことが起こるのは有害。必要であれば操作的に定義すべきだが、過度になってる
1.2.2.2 Avoid Forming Relationships with Subjects.
- [反擬人化原則のおかげで]動物との関係を作ることを避けることで、非科学的に解釈することを避けようとしている
- だが、例えば人間の子供を研究する場合には関係形成に時間をかける[のに、人間以外の動物との関係形成に時間をかけないのはどう正当化されるのか? されないだろう]
- 社会性のある動物の研究では、関係形成はその行動の理解に重要。
- なぜなら、[もし関係形成をしないなら]コミュニケーションが取れないし、[関係の欠如のために]動物の心理的なシステムの一部である足場(scaffold)や動機づけが存在しない可能性があるから
- 例:過剰模倣は人間だけと言われてきた。しかし、人間であっても外国語を話す人には過剰模倣しないし(Buttelmann et al. 2013)、犬の場合は養育者を過剰模倣するが(Huber et al. 2018)、未知の研究者を過剰模倣しない(Huber et al. forthcoming)ことが最近わかった。[これらは関係形成を避けないことによって得られた知見である]
- このこと哺乳類だけではない。例えば、ヘビとの関係を築きながら研究する者もいる
- なぜなら、[もし関係形成をしないなら]コミュニケーションが取れないし、[関係の欠如のために]動物の心理的なシステムの一部である足場(scaffold)や動機づけが存在しない可能性があるから
- よって、研究者に関係形成を避けるように指示する限り、反擬人化主義は否定されるべき